鎌倉暮らし

日々、思うこと。絵封筒や読書の記録。ときどき、鎌倉のおすすめ情報など。

重さ3kg、たたみ約1畳分。皮膚という臓器の奥深さ。

ちょっと前になりますが、この本を読みました。

【第三の脳――皮膚から考える命、こころ、世界

 
夏井医師のHP(新しい創傷治療)で紹介されていた1冊、傳田光洋さんの

皮膚は考える (岩波科学ライブラリー 112) 」に興味を持って Amazonサイトに

行ったところ、このサブタイトルに惹かれてしまい、先にこちらを購入。

すごく面白かった! ので、ご紹介をば。

著者は資生堂で皮膚の研究をされている方だそうです。
本書の半ばで、

医者ばかりの日本の皮膚関係の学会では、化粧品会社の研究員は

はじめから異端です。失う地位も名誉も のっけからありません。

思い切って、日ごろの空想を書いてみましょう。

と宣言されて、実に様々な科学的空想を書かれています。
でも、ベースにあるのは あくまでも最新科学なので、全くの夢物語では
ありません。だから楽しい。
もしかすると、ちょっと先の未来には、これが常識になっているかも?と
思えることもたくさん。
全6章で構成されており、前半3章は最新の研究などを含む科学的な話が主体、
後半3章は 空想的近未来科学小説の要素を混ぜた科学的考察。

タイトルである「第三の脳」とは、皮膚のことです。
長い間、「体を包むためにある」と考えられてきた皮膚。
けれど、実は臓器の超エリートである脳と同じ 外胚葉生まれ。
基本的なシステムや細胞単位でのふるまいも、とても良く似ているのだとか。

ところで。
消化管には、「独自に存在する 脳とは別の神経系」があるのだそうです。
モルモットの消化器を入り口から出口まで(口から肛門まで)取り出して、
培養液に漬けて生かしておく。(うーん...想像したくない。)
この状態で、入り口(口)に 錠剤状のモノを押し込んでやると、
消化器の管が動き出し、グリグリと錠剤状のモノを正しい方向に送って
出口(肛門)から出す という。脳がつながってないのに!
そこから、「消化器は第二の脳である」と唱えた Dr.Gershon。

脳の機能を、感じ、考え、判断し、行動する指示を出す臓器だと定義すると、
「皮膚は第三の脳である」と宣言するに値する様々な機能、現象を見出した著者。
しかも、コミュニケーション機能も備えているのだから、こころさえも...と、
話はつきません。
アトピーうつ病などの病歴、研究者として順風満帆とは言えなかった
様々な経験などが、その考察に広く活かされていて、読み物としても面白い。
もちろん、皮膚に関する最先端の研究を知ることもできます。

前半3章を読んで、肌をもっと大切にしよう、って思いました。
そして、好きな人の肌に触りたくなった。
後半3章を読んで、私が持っている"未知の皮膚力(?)”にワクワクした。

皮膚(肌)に興味があるのは、女性の方が多いかもしれません。が。
科学的根拠をベースに書かれた様々な近未来的考察。
スター・トレック好きの方なら、男女を問わず楽しめると思いますよ。
(意味わかるかな。笑)

ところで。
モルモットの実験のところで、ちょっと気になったことがあります。
もしも、口に入れた錠剤が 砂糖でコーティングされたものであったなら、
糖反射」が起きて 全く違う実験結果になっていたのかな~?...なんて。
アレ? 「糖反射」が起こるのって、人間だけ?