鎌倉暮らし

日々、思うこと。絵封筒や読書の記録。ときどき、鎌倉のおすすめ情報など。

良い児童書は、ビジネス書よりよっぽどためになる

f:id:coco_k:20150608184553j:plain

2013年8月~2014年4月にかけて、8ヶ月間で全身麻酔の手術を3回して、このまま社会復帰できないんじゃないか、自分には生きている価値なんて無いんじゃないか、と激しく落ち込んだことがありました。

その詳細は、いずれ書くとして。

その間、「何もできないなら、せめて本でも読もう」と思ってはみたものの、何を読んでも自分の中に入ってこない。

読みたいと思う本すら、選べない。

読書をつまらない、役に立たない、と思ったのは人生で初めてのことでした。

 

そんな状態の時に、一番心に響いたのが1冊の詩集。

正確には、その中の1つの詩...というか、なぞなぞ。

 

この世でいちばんみじめな人間が もっていて
なんでももっている人間は もってないもの
元気いっぱいの人間には くるしみのたねとなり
飽くことしらぬ人間には あったほうがいいもの

とことん愚かなものが とことんしっていて
けちでもこれは いそいそとくれてやるもの
健康な人間には 薬のような役をはたすもの
でもそれをよろこぶひとの こころはからっぽのまま

けれどもそれは 冷酷なこころをやわらげるもの
うらぎり行為を けだかい行為にするもの
そしてそれをできるものが それを手にいれる
目のみえない人間でも 闇夜にみえるもの

それを期待するものは 絶望するかもしれないもの
それは賢明なものを うろたえさせるもの
悪魔には かならず手にはいるもの
なぜならそれは それを愛するものの物になるから

愚かものなら おおむねしっているこのことばは
なぞのなかのなぞ のようにおもわれる
なぜならそれを とこうがとくまいが
みつかるものは おなじだから

 

岩波書店「エンデのいたずらっ子の本」より、『みっつめのなぞなぞ』)

 

作者は、「はてしない物語」や「モモ」で有名な作家、ミヒャエル・エンデさん。

もちろん、翻訳本ですから、原著のドイツ語版とはイメージが違うのかもしれませんが。

この時の私には、一番「効いた」ものでした。

なぜなら、私がずっと握りしめていたものが、なぞなぞの答えだったから。

 

なんだかわかります?

答えは、『無』。

 

子供向けの詩とは思えませんよね。

 

私が持っているのは写真の初版なんですが、残念ながら、こちらは今は絶版になってしまいました。

ただ、エンデ全集〈6〉いたずらっ子の本 として出ているようです。

始めて読んだのは子供の頃ですが、いつ読み返しても、新しい何かを見つけられる1冊です。

ご興味のある方は、ぜひ。

 

読んで頂き、ありがとうございました。

良い一日をお過ごしください。