鎌倉暮らし

日々、思うこと。絵封筒や読書の記録。ときどき、鎌倉のおすすめ情報など。

「快眠・快食・快便」は ブタの生きがい

と 言われたのは、三石理論(分子栄養学)で知られる三石巌氏。

よく、健康の条件として「快眠・快食・快便」の3つをあ挙げる人がいる。
よく眠り、よく食べ、気持ちよく排泄さえしていれば、自分の健康状態に
満足できるというのだ。だが、その程度で満足できるのであれば、人間を
やっている意味はない。
たとえばブタになったとしても、「快眠・快食・快便」は味わうことができ
るだろう。ブタならそれで生きがいを感じられるかもしれないが、人間が
寝て、食べて、出すだけで満足してはいけない。
                          「医学常識はウソだらけ」より

この部分を読んで、「千と千尋の神隠し」の ワンシーンを思い出したのは
私だけではないと思います。
また、目標を見失っている時など、自分の状況次第では とっても耳が痛い
言葉でもありますね。
1901年に生まれ、95歳で亡くなるまで生涯現役であった方の言葉だからこそ
重く響くのかもしれません。

ご本人いわく、
  「私は医者でも栄養学者でもなく、物理学をかじったもの」
とのことですが、実はかじったどころではなく、東京大学物理学部物理学科卒
・同大学院修了。
日大・慶応大・津田塾大等の教授を歴任され、ご自分の病気を機に(還暦を
過ぎてから)医学の研究に乗り出した、というなんともパワフルな方です。
それこそゼロベース思考で、医学常識ではなく科学を基本に様々な考察を
されています。

 「医学」は「科学」にあらず
 「医学常識」は「科学の非常識」
 「医学常識」はウソだらけ
 栄養学の導入なしに医学の近代化はない

...この言いきりっぷりが 気持ちいいです。

今回 読んだ 三石氏の著書は、次の3冊。
 医学常識はウソだらけ~分子生物学が明かす「生命の法則」
 健康自主管理のための栄養学
 老化と寿命~「とし」をとらない秘訣とその実践

三石氏の唱える分子栄養学やビタミンカスケード理論では、場合によっては
喫煙 や 飲酒に有効性があると言っていたり、糖質の摂取を推奨していたりと、
全面的に同意できるわけではありません。それでも、とにかく知識も経験も
豊富な方なので、随所に見られる雑学と歯に衣着せぬ言いっぷりが楽しいです。

上記の3冊を読んで、私が面白いな、と感じたのは次の部分。

健康はレベルで考えるものだ。
 「健康 ⇔ 不健康」ではなく、例えば 0~10 などの段階で考えるのが適当
 であり、このレベルは日々変動するのが当然。
健康レベルを判断する上では、肉体的なことだけではなく、次のことも重要だ。
  ・幸せを感じているか?
  ・生きがいを感じているか?

老化というのは、秩序が無秩序に向かうことだ。
 =熱力学の第2法則(エントロピー増大の原理)

●老化には、「生理的老化(自然老化)」と「強制老化」がある
 生理的老化は避けられないものだけれど、強制老化の要因は ストレスや病気、
 活性酸素等、それに 本人の怠慢と無知 。 ...容赦ないですね(^^;)
 だから、対策次第で回避(軽減)可能である。  

 例えば、若い人と高齢者の 顔と太もも の肌を比較すると、顔では老化が
 明らかだが、太ももでは大きな差がない。太ももは生理的老化が主要因
 だけれど、顔の場合は紫外線(女性なら化粧品も?)などの強制老化要因が
 あるからだ。                    ...ナルホド。

また、次のようにもおっしゃっています。

  ■ 私たちの体は、細胞の集合体である
    →老化を考える時は、細胞を考えることが必要である
  ■ 細胞は、分裂能力によって3つに分類される
    →分類別に細胞を観察することで、老化を判断することができる

三石氏は、この分類を「更新細胞」、「成長細胞」、「安定細胞」と説明されて
いましたが、現在の分類名と違っているので、以下は現在の分類名で書きます。

分裂能力による細胞の分類

【不安定細胞(三石氏:更新細胞)】
 大人になってからも 常に分裂・増殖を繰り返している細胞。
 ex. 肌の表皮細胞、粘膜の上皮細胞、赤血球 など

【安定細胞(三石氏:成長細胞)】
 分裂能力は残っているが、通常はほとんど分裂しない細胞。
 事故等によって細胞が失われるようなことがあれば、盛んに分裂・増殖する
 性質を持つ。
 ex. 肝臓・腎臓の実質細胞、皮膚の線維芽細胞、血管内皮細胞 など

【永久細胞(三石氏:安定細胞)】
 大人になってからは分裂しない細胞。
 ex. 神経細胞、心筋細胞、骨格筋など

               ...安定細胞の使い方が真逆なので、ちょっと混乱しますね。

ただし、ごく最近、神経細胞は特別な刺激を与えると再生することがある、と
わかったらしく、今後の研究成果によっては、神経細胞が【安定細胞】に属する
ようになるかもしれないそうです。
分裂しない【永久細胞】は、傷ついたり失われたりしても代用細胞がないので、
老化や寿命に大きな影響を持っているとも考えられています。
そんな神経細胞が再生する...って、すごい発見ですよね。

おもしろいことですが、わたしたち人間の場合は この3種類の細胞を持っているのに、昆虫のように永久細胞(*)しか持たない動物がいて、その寿命がとてもみじかい、という例があります。そうかと思うと、イソギンチャクのように、不安定細胞(*)だけしか持たない動物がいて、そのすべての細胞がたえず更新されているために、個体の寿命がどうなっているのかわからない動物もいるのです。                       「老化と寿命」より

(*)は、現在の分類用語に書き換えています

 この部分(↑)にもビックリでした。そうなんだ~!

この 分裂能力による細胞の分類は、生物学・生化学などを勉強された方には
当然の知識かもしれませんが、私にとってはものすごく新鮮でした。
だって、今まで、全ての細胞が常に生まれ変わってる
思っていたんですよね...。だから、すごいビックリ。
こんな基本的(?)なことを理解していなかった自分 orz
怠慢と無知が老化を助長する...ことを肝に銘じて、これから
もっと勉強していこうと思います。