鎌倉暮らし

日々、思うこと。絵封筒や読書の記録。ときどき、鎌倉のおすすめ情報など。

おばあちゃんとの会話には、ものすごく頭を使います

久しぶりに、おばちゃんに絵封筒を送りました。
年末からお正月にかけては、年賀状を除いて なかなか絵封筒に手が
つかなかったのですが...やっとです。
ひと足早い 節分。鼻に見立てたイチジクが 82円切手です。

f:id:coco_k:20160128183522j:plain

 横にすると見づらいですね...

ブログにも何度か書きましたが、祖母はアルツハイマーを発症しています。
私にとっては、半分は母親とも言える人なので、会う度に症状が進んでいる
ことを感じるのはとても辛いけど、せめて一緒にいる時間は楽しく過ごそうと
決めています。

 『まだ、私のことを忘れていないかな?』

毎回、そんな期待と恐怖を抱えて会いに行きます。

 

ご存知の方も多いかもしれませんが、アルツハイマーには大きく2種類の
症状があります。中核症状 周辺症状 と呼ばれるものです。

【中核症状】
  脳の神経細胞が壊れることによって、直接起こる症状
  具体例としては...
   ・直前に起きたことも忘れる記憶障害
   ・筋道を立てた思考ができなくなる判断力の障害
   ・予想外のことに対処できなくなる問題解決能力の障害
   ・計画的にものごとを実行できなくなる実行機能障害
   ・いつ・どこがわからなくなる見当識障害
   ・ボタンをはめられないなどの失行
   ・道具の使い道がわからなくなる失認
   ・ものの名前がわからなくなる失語        ...など

【周辺症状】
  周囲の人との関わりのなかで起きてくる症状。
  その人の置かれている環境、人間関係、性格などが絡み合って起きてくる
  ため、症状は人それぞれ表れ方が違う。薬の副作用によるものも多い。
 具体例としては...
  抑うつ・思い込み・妄想(被害妄想)・暴言・暴力・興奮・不潔行為
  介護への抵抗・異食・徘徊・仮性作業(目的不明・意味不明な行為) …など

介護が困難になるケースの大半は、周辺症状によって家族や周囲の人間が
疲れ切ってしまうことが原因だといいます。
ニュースなどで話題になるのも、主に周辺症状のほうですね。
中核症状だけならば、『アルツハイマーは、忘れてしまう(覚えていられない)
病気なんだ』と考えることも出来るかもしれないけれど、周辺症状が進行すると、
理性的に割り切れないこともたくさん出てきて...。
祖母にも様々な周辺症状があるようですが、私が会いに行っている時に出た
ことはないので、実感としてはわかりません。

祖母と一緒にいて感じるのは、中核症状。
一番多いのは、同じ会話を繰り返す というものです。
例えば、私は 祖母が 好きそうなチーズや、ロゼワインなどを買って会いに
行くことが多いのですが。

『こんな珍しいもの、誰が買ってきたんだい?美味しいねぇ。初めて食べたよ。』

と、いつも嬉しそうに食べてくれます。それが、前回と同じ商品であっても。
30分くらいすると、また言う。

 『こんな珍しいもの、初めて食べるよ。美味しいねぇ。ありがたいねぇ。』

何度も、何度も。口に入れる度に、初めて食べたよ、美味しいね、どこで
売ってるんだい?と言いながら、ニコニコ。
私も、『おばあちゃんが好きそうだな、と思ったんだよ。良かった~。』って、
何度でも言う。
それを見て母は『同じ会話に よく付き合ってられるわね?!』と あきれるけれど。
何度も 何度も『これはマズイね』って言われたら、そりゃ嫌な気もするけどさ。
美味しいね、って笑ってるんだから いいんじゃない?
私は、そう思う。

30分毎に、新しい出会いを 楽しんでいるんだから。

むしろ、ここで試されてるのは 私の会話力。
繰り返される おばあちゃんの言葉に、
 『それ、さっきも言ってたよ。』
 『何度も同じこと訊かないで。』
そんな風に答えるのは簡単だけど、それじゃ私がつまらない。
聴いてる周りの家族もイライラしちゃう。
次は、なんて答えよう? これにまつわる どんな話があったっけ?
そんな風に考えながら、必死に頭を使う。
おばあちゃんに伝わるように。
話が長すぎたり、難しくなったりしないように。
何よりも、楽しい会話になるように。
そうすれば、自然と周りに笑いと会話が広がっていく。

繰り返したって、いいじゃない。
おばあちゃんにとっては、毎回が新しい会話なんだから。
忘れてしまう、覚えていられない。それが主症状の病気なんだから。

 

一緒に暮らしていたら、周辺症状に悩まされていることでしょう。
いつも気持ちにゆとりがあるわけではないから、同じ会話にイライラする
こともあるでしょう。
なによりも、何故アルツハイマーに?という、疑問でも 怒りでもある
感情に揺れることもあるでしょう。
離れて暮らす私には、正直わかりません。
祖母と一緒に暮らす両親の苦労は、想像することしかできません。
こんな私の考えを、無知ゆえの気楽さ、と受け取る人もいると思います。
私なりに思うことはあるし、アルツハイマーという病気自体に対して、
また 祖母が受けている医療行為に対して、怒りに似た感情を持つことも
あるけれど。
私に出来ることには、限りがあるから。
せめて、たまにしか会えない私は 楽しい会話だけをしよう。
同じ話の繰り返しでも、私の言葉が変われば、おばあちゃんの答えも変わる。
私の知らなかった昔話が出てきたりする。
一緒の時間を 楽しくするのも、つまらなくするのも、私次第。
そんな風に思うのです。

お題「節分」