鎌倉暮らし

日々、思うこと。絵封筒や読書の記録。ときどき、鎌倉のおすすめ情報など。

「みんなが...」というウソの心地良さ

「みんながやってるから 私もやりたい」

子供の頃、一度は口にしたことがありせんか?

ええ、私も言いました。4歳の時です。

 「みんながやってるから、私もバレエ習いたい」

幼稚園児のウソなんて、たいていが 親にはバレバレなものですが。
これは、相当わかりやすかった。
昭和50年代。埼玉の田舎町でのことです。
みんながバレエをやってる...はずがない。

バレエを習っていたのは、幼稚園で仲良しだった ある女の子。
その日、幼稚園でバレエの発表会の写真を見せてくれたのでした。
ヒラヒラの可愛い衣装を着て、ほんのりとお化粧もされた写真。
当然、写真を見た周りの女の子たちはどよめきましたよ。
そして、みんなでバレエに憧れちゃった(笑)

さて。くだんの発言に続く、の会話です。
 「"みんな"っていう人はいません。誰にでも顔と名前があるんです。
   みんなっていうのは 誰と誰と誰のこと?」
 「...××ちゃん...」
 「他には?」
 「...××ちゃんだけ...(ここでウソを重ねる智恵と度胸(?)がなかった私)
 「じゃあ、なんでみんなって言ったの?」
 「...」
 「××ちゃんがバレエやってるから、あなたもやりたいの?」
 「...ウン」
 「××ちゃんと同じがいいの?」
 「...ウン...」
 「そう...

  じゃあ、××ちゃんが病気になったら、あなたも病気になるのね?」

 「××ちゃんがケガをして遊べなくなったら、あなたもケガをするのね?」

 「××ちゃんが死んだら、あなたも死んじゃうのね?」

 「そこまで同じがいいって言うなら、
              お母さんも考えてみるけど?」

 「それでいいのね?!」

途中から、あまりの勢いに押されて反論はおろか返事も出来ず。
最後の「死」のところで、その言葉が持つ漠然としたイメージに怖気づいて
半泣きになりました。
「そんなのヤダ」というのが精一杯。
もちろん、バレエは習わせてもらえませんでした。

この経験、正直かなり強烈でした。でも、学んだことがあります。

 お母さんに 「みんな」は通用しない。
 ...
イヤイヤ、それだけでなく。

 「みんな」は、理由にも言い訳にもならない。
 「みんな」とは 誰のことなのか。
 「わたし」はどうしたいのか、どう思うのか。

そんなことを 考えるようになりました。
おかげで、小学校に入る頃には 「みんなが」という言葉を毛嫌いする
理屈くさーい子供の出来上がり。(同級生には かなり煙たがられたっけ...)
「なんでこんなに理屈っぽい子になったんだかねぇ?」と 言った母親に
「あなたの教育のおかげです」...とは(さすがに)言えなかったけど。

ま、4歳児には かなり手厳しい一撃でしたが、今となっては
実に貴重な教育であったと感謝しています。

ところで。
何故、4歳の私は 「××ちゃん」ではなく、「みんな」という言葉を選んだのか?

 4歳なりの交渉術か?
 「みんな」の意味を知らなかったのか?(イヤ、これは別の意味で問題)

今なら わかります。
自分ごと騙したかったんです。
ウソをつくのは 悪いことだと思ってた。ウソはつきたくない。
でも、少なくとも一人はバレエを習ってて、他のお友達もみんな
「いいなー」「私もやりたい」って言ってた。だから、近いうちに他にも
バレエを習う人がいる(かもしれない)し...だから、今「みんな」って
言っても、ぎりぎりウソにはならないよね?
よし、気が付かないふりして「みんな」って言っちゃえ...

4歳の私が、こんな文章や言葉で しっかり(?)考えたとは思えないけれど、
そんなずるさがあったのは確かだと思います。
こういう判断は、4歳児といえども瞬時にできるものです。

「みんな」 と言う時は、自分を騙しているのではないでしょうか?
自分の考えを(例え自分自身の中だけであっても)明確にするよりも、
みんなが言ってるから、みんながやってるから、と追随する方が、ずっと楽。
上手くいかなかったり、失敗したりしても、みんなと同じだったら、
そんなに不安にならないし。
そもそも 私の本当の意見は違ったし」、っていう 言い訳も用意できてる
現代は、WEB経由で いつでも気軽に他人の生活を垣間見ることができるから、
なおさら「みんな」に振り回されやすいのかもしれませんね。

だから、考えてみましょう。

 みんな、って? 顔と名前が浮かびますか?

 みんな、って何人のこと? 何割の人のこと?

 みんな、って 自分にとって重要? 自分よりも?

 

って、教えてくれた あなたなのに!

...お母さん!
何故、今になって あなたがこの言葉を多用するんでしょう?

 「テレビで有名なお医者さんが言ってた...」
 「雑誌に書いてあった...」
 「ご近所のみんなも言ってる...」

...それ、全部、「みんなが」って言ってるよね?

 

ね?いつのまにか、無意識に使っていませんか?
たとえば、ちまたにあふれる健康情報。流行りの何か。
きちんと自分で考えて、調べて、納得して選んでますか?
それが本当に自分の選択だと言えますか?
何かが違う!と思った時、みんなに責任転嫁していませんか?

自分ごと騙していませんか?

それじゃ、4歳児と同じですよ。

「みんなが」っていう言葉の心地良さに負けたらダメです。
大人なんだから...ね、お母さん。